2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

076:まぶた

旦那さまぶたまんなどは如何です?五月蝿きまでにメイド中華は (野州)

077:写真

色あせぬ写真の中の兄妹(あにいもと)うさぎの網の前にしゃがんで (新井蜜) 黒いまま写真に写る地点から指先で塗る芝居が観たい (短歌製造機メカ麦3号) 内視鏡写真にはじめてわが見るは大腸といふ赤きトンネル (原田 町)

078:経

今までの経験からして三日後に私はこの手を放すのだろう (稚春) 野良犬が目には見えない経線をぶった切るため所持するナイフ (暮夜 宴)

079:塔

危うさの微塵もなくてただそこにたってるだけの塔にハゲ鷹 (帯一 鐘信) 塔に住む囚われの姫の目に眺む ここ七階のバルコニーより (本田鈴雨)

080:富士

親友の墓所尋ぬればあたたかき大きな富士に抱かれており (はこべ) 夕空に山かげ浮かぶ地に在れば居を移すたび富士をたしかむ (本田鈴雨) 富士山を切り取り上下を逆にしてスッポリ納める浜名湖の鞘 (新井蜜)

081:露

露の玉転がり落ちて洋服にすうとしみ込む朝の草取り (川内青泉)

082:サイレン

サイレンの音のせぬ夜の森閑は恐ろしくもあり救急病棟 (ねこちぐら) サイレンの鳴れば麦刈る手を休め弁当食いしこともありたり (西中眞二郎) サイレント映画みたいな夜だから両生類の皮膚感覚で (暮夜 宴) 遊ぼうか軽くなれるわ一筋の線路には石サイレン…

083:筒

母さんが電話口で吸うから筒の電話線で家へ帰った (zoe) 封筒の中身忘れて覗き見て「ああそうだったか」とまた思いいぬ (西中眞二郎) 筒五つ居つつ鋳つ筒何時五つ異対結いつつつい痛つつつつ (此花壱悟) むなしさに筒をのぞけば一つ目がこっちをみてる陽…

084:退屈

現実を直視出来ない金曜の正午(まひる)の情事だから退屈 (ふしょー) 僕と居て退屈そうにあくびする君のみみたぶ引っ張ってみる (野良ゆうき)

085:きざし

春まだきざしきわらしの面立ちを詮議している弥生の炬燵 (此花壱悟) 堕ちてゆくきざし顕はに大根の咲けるにまかす白き花なり (野州) 快方のきざしに今日のわれの眼に青あぢさゐの花があかるし (春畑 茜)

086:石

ありふれた石のひとつも置けば良いあちらへ渡る目印として (ふしょー) 石墨でけんけんぱ描く要領でひたいに「肉」と描く日曜日 (此花壱悟) てのひらに淡いピンクは溶け去りぬ少女の夏の紙石鹸の (本田鈴雨) 手に余る石をかざして振り下ろす先にあなた…

087:テープ

君の声思い出しては咀嚼するテープ起こしよりも孤独に (稚春) テープ切る直前転びつぎつぎと抜かれて悔し四百リレー (川内青泉) カセットのテープのように適当にひっぱりだして遊ばれちゃった (佐原 岬) 切り取ってテープに詰めた思い出の賞味期限を決め…

088:暗

もうすこしもうすこしだけてのひらのなまえを暗記させてください (坂本樹) 暗闇の中を帰って行くきみの背中に投げる石が当たらぬ (新井蜜)

089:こころ

干からびたこころを放置ごめんなさいディズニーランドのコインロッカー (駒沢直)