086:石
ありふれた石のひとつも置けば良いあちらへ渡る目印として (ふしょー)
石墨でけんけんぱ描く要領でひたいに「肉」と描く日曜日 (此花壱悟)
てのひらに淡いピンクは溶け去りぬ少女の夏の紙石鹸の (本田鈴雨)
手に余る石をかざして振り下ろす先にあなたの頭はなくて (新井蜜)
087:テープ
君の声思い出しては咀嚼するテープ起こしよりも孤独に (稚春)
テープ切る直前転びつぎつぎと抜かれて悔し四百リレー (川内青泉)
カセットのテープのように適当にひっぱりだして遊ばれちゃった (佐原 岬)
切り取ってテープに詰めた思い出の賞味期限を決め兼ねている (すずめ)
088:暗
もうすこしもうすこしだけてのひらのなまえを暗記させてください (坂本樹)
暗闇の中を帰って行くきみの背中に投げる石が当たらぬ (新井蜜)
089:こころ
干からびたこころを放置ごめんなさいディズニーランドのコインロッカー (駒沢直)
091:命
白色度五割を切った僕たちの命をすぐに漂白しなきゃ (ふしょー)